theme-photo
text-sketch
menu top
005 久ヶ原教会
 
久ヶ原教会と山口文象自邸のあれこれ

久ヶ原教会の使われ方

 日本基督教団久ヶ原教会は、戦後すぐに山口文象が設計した教会を一度山口自身の設計により建替えたものだが、老朽化のため近年改修し、現在も使い続けている。付属した幼稚園の建物と接続してもおり、建設当時の面影は建築のシルエットに見える程度だ。
日曜日の朝、教会の信者たちが続々と集まってくると、狭い室内はあっという間に人々で溢れかえる。聖書の教えが説かれ、聖歌が歌われる。年配の信者の方が多いが、若い人も会へ参加している。信者に建築関係の人物がおり、近年の改修は彼らの手によってなされたものであるらしい。
山口は、教会をひとつのテントに見立てた。設計の痕跡はほとんど眼に見えなくなってきてはいるが、常に人が集う場所である教会は、そこに集まる人々の手でメンテナンスを施されることで、役目を果たし続けているともいえる。

文象さんちの演出

 文象さんちの息子さんは作曲家でピアニスト/オルガニストでもある。山口文象が死去してからは、息子さん夫婦がこの家を住まいにしている。居間にあたる部分は改修されていて(といっても、山口文象の生前から、自邸は改修に次ぐ改修の結果、いわゆる原型と呼べるものは、どこにもとどめていないのだが)、そこで開かれる毎年の小さなピアノコンサートが恒例行事だ。
コンサートでは、グランドピアノと二つのオルガンを、息子さんが順繰りに移動しながら弾いてゆく。移動は曲間を調整する、演奏会のリズムともなっている。グランドピアノと、オルガンのうちのひとつには天井からの照明が当たっているのだが、もう片方のオルガンは暗がりにあって、照明が届く位置にない。奏者は、椅子に腰掛ける前に、パッと自身でスタンドにあかりを灯す。どこかの音楽ホールでの演奏だったら、その光景は、あらぬ笑いを誘ってしまったり、準備不足を感じさせたりしてしまうかもしれない。だが、文象さんや息子さん、奥さんらの縁の人々が集まったこのコンサートでは、効果的に、一場面を演出しているのだ。(s)

005 久ヶ原教会と山口文象自邸
   
menu bottom