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003 コアのあるH氏のすまい
 
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宝物、あるいは小住宅
2009年8月8日
戦災復興期の生産体制、限られた物資、住宅不足を背景として生まれた建築物は、小住宅、または戦後小住宅と呼ばれる。
建築家は最小限の敷地を題材として、平面構成と立体化を試みる。そこでの蓄積は、機械室・階段・エレベーターなどの共用施設がまとめられたコアシステムとして、超高層ビル、巨大建築へと成長する。ビルドゥングスロマン、いやビルディングスロマン。
平面構成の追求による、しあわせ家族計画。戦後の建築物は指折りの名作とその連続で語られ、住宅特集では現在も、建築家の名前と作品名が併記して編まれている。作家と作品とで自律したその語りは賛否両論あれど、依然として現在進行形である。
日本住宅公団と住宅金融公庫、団地と小住宅という二分。都市住宅は都市と住宅をわけたのか、という問いを進める。作者不明、作品不在による匿名的な都市は、なんだか味気ない。だが人の家には入れないことが当たり前のご時世。人の持ち物を羨み、都市に点在する宝物として拝むことには違和感がある。そもそも宝物を数珠繋ぎにして都市を歩けば、戦後建築史はできあがるのだろうか。
繋がれた数珠には、電線や暗渠や公衆便所は挟まっていない。ただし近現代の建築物を小品という括りで見てまわるという設定上、無視はできない。自律性に依拠したその語りを解放し、小品をバラバラと置いてみると、意外な関係性が生まれる。まずは宝物の宝物たる由縁を、拝みにいくことにした。 (t)
コアのあるH氏のすまい
設計:増沢洵
竣工:一九五三年
場所:東京都世田谷区 等々力
   
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