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 WORKS A2
 
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 時代は19世紀のアメリカ。空気は乾ききっている。それは水辺に佇む牛がそのまま息絶え白骨化し風化してゆくのが建築に見えてくるような風景、と手短だが説明しておく。
 人は馬に給餌する。馬は円形に生える草も食む。馬が糞を垂れ床に設けられた隙間から落ちると、豚が踏みならし肥やしになる。豚の餌はまた別に人がやる。この生産システムが生まれたのが、19世紀アメリカなのだ。それは広大な土地を前提にして、大量の生産を可能にする、牧畜における近代化の一過程と言い換えることもできる。

 《A2》は家畜―人間―建築の縮図だ。再現ではなくて、縮図。この言葉にこだわってみるのは、私が再現と縮図の間に手法としての明確な違いを意識しているからだ。再現とは、緻密に当時の写真やらの史料を漁って検証を行い、例え部分的にでも忠実に、よりホンモノに近いものを構築することだ。対して、縮図とは要素を抽出して編集し、イメージを組み立てなおすことを言う。単に縮めるだけのことを縮図とは言わない。縮図となることで初めて、手に携えて眺めることが可能な像が立ち上がる。(※注)

 《A2》は建築の名称ではない。ある時代ある土地の時間を家畜―人間―建築の縮図として描いた挿絵に対して与えられる名だ。(s)

※注
 ここに並べたドローイングの半分は、かつてアメリカに建っていた(であろう)建築の断片である。建築の一部分。ただ、この断片をいくら集めて継ぎ接ぎしてみても、建築は現れてこない。また、小さな断片から昔の全体を考察することも、目的ではない。
 私が行った作業は、ひとつひとつの断片を丹念に記録してゆくこと。そうしているうちに、19世紀のアメリカ建築、の像について考えが巡り始める。19世紀アメリカという層にあった断片を集め、かつてあったかもしれない建築を想像するきっかけとしてゆくのだ。《A2》における縮図の考え方の一端である。

   
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